私がラサを訪れたときのこと。小さな村で出会ったチベット人の少年に、「自分の国を撮ってきて」とカメラを渡した。後ほど彼が撮った写真には、「我愛中国」という漢字と、真っ赤な中国国旗が写っていた▼チベット自治区の首都ラサでは、北京との間を走る青蔵鉄道の完成以降、急速な中国化が進んでいる。大量の資本と人口の流入が止まらないからだ。町には漢字が溢れ、目抜き通りの名前は北京平和路へと変わった。今では中国人の人口がチベット人のそれを上回る▼チベットにおける教育、インフラ、軍備、すべての実権は中国が握る。先程の少年も、中学校では漢語教育と愛国教育を受けているそうだ。世界中に散らばったチベット難民が叫ぶ、「フリーチベット」の声が悲しく響く▼先日、青蔵鉄道がヒマラヤを越えネパールを抜け、インドの国境近くまで延長することが決まった。その鉄道が完成すれば、インドを巻き込んだ国際社会への影響は計り知れないだろう。中国は同様に、新疆ウイグル自治区を経由して、パキスタンへと繋がる鉄道の計画もはじめている▼かつての大日本帝國は、南満州鉄道を使って満州を己の物にした。まるで歴史をなぞるかのように、中国は西へ南へと鉄道の延長を進めている▼天空列車と名高い青蔵鉄道の下で生きるチベット人たちは、もう声も出せないほど疲れはてていることだろう。長く続く線路の下には、たくさんの少数民族たちの生活や人生があることを、忘れてはいけない。


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