ジョセフ・クーデルカ展を見て

東京都写真美術館開催中の『ジョセフ・クーデルカ プラハ1968』をみにいった。ワルシャワ条約機構軍がプラハを占領した「チェコ事件」最初の7日間の様子を撮影した気鋭の写真家、ジョセフ・クーデルカの写真を集めた展示だ。

そもそもクーデルカは、当時は名の知られていない写真家であった。自分と自分の家族の命を守るために、写真は極秘裏に西側に運ばれ「P.P.(Prague Photographer、プラハの写真家)という名前で世界に写真を発表したからだ。匿名の写真家は1969年にロバート・キャパ・ゴールドメダルを受賞したものの、彼が名前を公表する1984年まで、彼の素性を知る者はほとんど世界に存在しなかった。

プラハの春という社会主義の緩和政策、変革運動が進むチェコスロバキア。そんなチェコスロバキアに「社会主義の正当性」を守るために攻め入るソ連軍。そしてそれに抵抗するプラハ市民。彼が撮った一連の写真たちは、そんな時代の一変をしっかりと捉えている。自分たちの街が、自分たちの国が占領されていくプラハ市民たちの感情をしっかりと、そのなかのひとりの「市民」として伝えているからだろう。モノクロで繊細な美しい写真から伝わる彼らの表情が心に刺さる。展示方法が少々見にくいものの、それを圧倒する写真の素晴らしさは、クーデルカの才能といっても過言ではないのかもしれない。

ある写真の中のプラハ市民は拳を高く手にあげながら、ソ連軍の戦車に向かって叫び声をあげていた。写真だから何も聞こえないはずなのに、何かが聞こえてくる。ああ、これが心の底から叫んだひとびとの「声」なんだな、と痛感した。しかしそんな声も虚しく、プラハの春は終わり、チェコスロバキアは占領された。モノクロで伝わる彼らの心情は、想像を超えた悲しみであったに違いない。

●参考

ジョセフ・クーデルカ プラハ1968

http://www.syabi.com/contents/exhibition/index-1353.html